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  ホワイトサンズUFO搭乗事件 第3話 ダニエル・フライ

UFO Contactee No.140 より転載 久保田八郎訳

(前回までのあらすじ)

1950年7月4日の夜、米ニューメキシコ州ホワイトサンズのロケット実験場で技師として活動していたダニエル・フライは、暑さに耐えかねて砂漠地帯へ散歩に出かけたとき、突然空中から不思議な円形の物体が降下して眼前に着陸した。驚いている彼の耳にどこからともなく人間の声が響いて、地球の科学の誤りその他について説教し始めた。フライは荘然として聞くのみ。これは実際に発生した驚異的な事件として世界のUFO研究界を動揺させた。この記事は彼の手記の全訳である。


基本的な真理は簡単なもの

異星人の声は続く。

「そして基本的法則は今や分かれ始めて反対の方向に散らばり始めていることに気づきます。すると科学者は心によって受け入れられる知識の限界に近づいていることや、あらゆる物理的な法則は究極的には全く統計的なものになるという結論に達します。これは地下鉄の列車に乗って行くようなものです。たぶん最後には目的地へ着くでしょうが、どこへ行くかが分からないために、同じ場所へ着くのにもっと短て容易な方法があることを確かめることができません。あなたがたの科学は今こんな立場にあるんです。

たとえば地球の科学者は電子が粒子で、波動性の二重性をもつものと定義せざるを得ない状態にあります。彼らは電子は確率波をもつ粒子だということによってこれを正当化させようとしています。これは心中で描くことのできない状態であって、そのために進歩の唯一の方法として抽象的な数学に頼らねばならなくなります。

正しく眺めれば、基本的な真理は常に簡単で理解が容易なのです。

だから幹の上から眺めれば、枝は"枝″として簡単な、理解の容易なものになるのです。てっとりばやく言いますと、あなたがたの科学が進歩し続けるために必要なのは、あなたがたがとまっている枝から枝との分岐点まで降りて、ふたたび登り始めることです。

これを実行しようとするのなら私達が援助してあげられますが、ただしあなたがたが援助を望んで私達が示す道に従うならばのことです。しかしこれは未来のことです。」

地球人を援助するための条件

「私達が地球人を援助する前に二つの事が達成される必要があります。第一に、私達の(訳注:これは異星人を意味するが、我々の太陽系とば異なる別な太陽系の惑星から来た人を意味すると思われる)肉体が地球の環境に生物学的に順応するようになることです。そうすれば地球人の中に入り込んでも間違えられなくなりますからね。 

第二の条件はもっときびしい。地球の各国間に存在する政治的緊張が和らげられる必要があります。地球の二大国が互いに相手に対して決定的な科学的勢力をもつようになれば、当然絶滅の戦争が起こるでしょう。私達は戦争を起こす国を助けるために来るのではなく、戦争を起こす動機をなくすような、ある程度の進歩をうながすために来るんです。私達も数千年昔、自分達の戦争の動機をなくしたんです。

だが、待てよ ― あなたは砂の中に立って科学や社会のあり方に関する話を聞くのにくたびれてきたようですね。」

この宇宙船は遠隔操縦の貨物輸送機

「それで私の方がもてなし役だということを思い出しましたよ。 船体の中へ入って少し飛んでみませんか。これは遠隔操縦の輸送機なのだが、単調ながらも全く快適な2-3人用の椅子のついた小さな乗員室もあるんです」 

私は答えた。

「船体の中を見せてもらえれば嬉しいのだが、しかも乗せてもらえるとすれば有難いね。だが、どんなふうにして入ればいいの? 船体の周囲を一周したけれど、入口らしいものが見当たらないよ。しかもあなたは地球の大気に慣れていないと言ったじゃないですか。私が中へ入れば体といっしょに空気を持ち込むことになるはずだ。あなたに何かの影響を与えるんじゃないですか」

「前にも言ったように、この宇宙船は遠隔操縦の貨物輸送機です。私はこの宇宙船内にいるのではなくて、あなたが母船″と呼ぶかもしれない司令船内にいるんです。それはいま地球表面から約1448キロメートルの位置にいます。この貨物輸送機は地球の大気の見本の採集に使用されます。

それで我々は自分の体をそれに慣らすことができるんです。貨物船倉をカラにすると、取入口を開くとともに船倉は空気で満たされる。また空気中の細菌も、研究や抗毒素の製造用に空気といっしょに取り入れられます。取入口は船体の頂上にありますから、さあ、それを開くことにしましょう」 

船体内に入るフライ

▲イラスト/池田雅行
▲イラスト/池田雅行

すると船体の頂上からシュツという、つぶやくような音が聞こえた。私はその昔の小さいのに驚いた。15秒間でこの大きさの船体を空気で満たせるほどの大きな船倉ならば、すごく大きな音が出るはずだからだ。

そこで、この船体はほとんど防音になっていることに気づいた。しかも吸い込まれる空気の音のほとんどは船体の内部で発するだろうから、外にはほとんど聞こえないのだろう。

すると船体表面からカチッという音が1回だけ聞こえた。小さな音だがするどくて、シングル・アーム・リレーまたはソレノイドの作動のために起こるような音である。

見ていると、そのうちに船体の左側の一部分が数インチほど引っ込んで横に動き、船体の壁の中に消えた。すると高さ約1メートル30センチ、幅90センチのタマゴ型の入口が現われた。

私はその入口の方へ歩み寄って、頭を少しかがめながら入口の中へ入って行った。もちろん船体の湾曲のために私の足はまだ地面にあったが、頭は中へ入っていた。

不思議な透視装置のある内部

のぞき込んで見た乗員室は船体の小部分を占めているにすぎない。奥行約2メートル70センチ、幅2メートルほどの部屋だが、床は地面上約40センチの所にあって、天井は床から2メートルばかりの高さがある。壁はわずかに湾曲して、壁と壁との接合部は斜めになっているので、鋭い角はない。もちろん私に最も近い角は船体そのものであり、内外に同じように湾曲している。この壁は約10センチの厚さがあり、ドアーがこの壁の中に引き込まれている。

この部屋には4つの椅子があるが、それは地球の近代的な"体にぴったり合う椅子″によく似ている。ただし地球のものより少し小型である。各椅子は私が立っている入口に向かっており、部屋の中央に二つずつ二列に並んでいる。椅子類と両壁の間には通路がある。

うしろの壁の中央の天井と接する所にパイプとレンズの付いた箱のような物があるが、これは小型映写機に似ている。しかしフィルムのスプールやその他の可動部分は見当たらない。このレンズから光が出ていた。映写機から出るような光線ではなくて散光状の輝きだが、べつだん強烈ではなく、心地よく眺めるのに充分な光量を放っている。

この椅子と照明がなかったらガランとした金属製の部屋にすぎないが、これらがただ一つの器具であるようだった。

「これはどう見ても招待用の部屋ではないな。まるで独房だ」と私は思った。

時速一万三千キロの飛行

声が響いた。

「前にも言ったように殺風景な部屋だが、椅子は座り心地がいいですよ。乗りたければ中へ入って座りなさい。あまり時間がないんだ」 

ほとんど自動的に私は船室の床に足を踏み入れて椅子の一つに向かった。座る前にカチッという音がして、背後の壁の中からドアーがすべり出始めた。

本能的に私は後ろの広々とした荒野の安全な場所へ飛び出ようとするかのように半分振り向いたが、ドアーはすでにしまっていた。もしこれがワナだとすれば、私はすでにその中に閉じ込められている。逃れられないワナに対してもがいても無駄だ。

「どこへ行きたいですか」 と、また声が響いた。

今度は私のそばから聞こえるのではなくて、むしろ体の内部から響いて-るような感じがする。まるで自分がしゃべっている言葉を聞いているかのようだ。

「あなたの持ち時間内にどこまで連れて行ってくれるのか見当がつきませんよ。おまけにこの部屋には窓がないので、どこへ行こうとかまいませんよ。私には何も見えないんだから」 

すると返答が響いた。

「あなたは外を見ることができるんです。少なくとも夜間に飛行機から見れるほどには見えるんだ。こちらのすすめを受け入れてもらえれば、あなたをニューヨークへ案内して約30分間でここへ連れて帰ってあげましょう。約32キロメートルの上空から見るニューヨークの夜景は、この地球上で最も印象的な光景ですよ」

「ニューヨークヘ! ― 30分間で ―  帰ってくる!」 と私はわめいた。

「そうなると時速約一万三千キロメートルになるぞ!いったいどうしてこんな宇宙船にそれほどのエネルギーが出せるんだ?この椅子には安全ベルトも付いていないじゃないか!」

「あなたは加速度から悪影響を受けることはないんです。実際には加速度というものを全く感じないでしょう。とにかく座りなさい。発進させるからね。飛行中に何か分からないことがあったら説明してあげますよ」 

私はドアーに最も近い左前側の椅子に座ったが、それが実に座り心地のよい椅子であることを知った。作られた材料はビニライトのカバーをつけたフォームラバーのように感じられたが、外側のカバーには縫い目やつなぎ目がなければならないのに、そんなものがないところを見ると、材質が何であるにせよ、たぶん一回だけの工程で型にはめて作ったものだろう。

透明になったドアー

するとまた声が聞こえてきた。「船室の照明を消して透視光線をつけましょう」 

その瞬間、室内は真っ暗になった。そして映写機のような物がふたたび作動し始めた。今度は散光ではなくて、映画またはスライド映写機のような光線である。この光線は可視スペクトルの最上端の濃い紫色だ。これがドアー部分に広がった。

このドアーは最初のときのように壁の中に入り込まないで、ただ存在しなくなったのである。少なくとも見た目には消滅したのだ。まるで極上の板ガラスの澄んだ窓を通して見ているような気がする。

「この宇宙船や我々異星人について、あなたが知りたいと思う物事のすべてを完全に理解させるほどの時間はありません。だが、あなたにとって奇妙と思われる基本的な原理を少しは説明できるでしょう」 と声が言った。 

というよりも私の声が言ったのだ。なぜなら、聞こえてくる音声は音波として耳に入ってくるのではなくて、私の脳の中で直接に発生していることに気づき始めたからだ。

「あなたが見ていたドアーは透明になったんです。このためにあなたは驚いています。というのは、あなたは金属というものを完全に不透明なものとして考える習慣があるからです。しかし普通のガラスは金属類と同じほどの密度があり、しかも固いのですが、それでもたいへん容易に光を透過させます。 

いま、ドアーの金属の表面に作用しているエネルギーの放射線は、いわば周波数増大器ともいうべきものです。この放射線は金属を透過して、そこへやってくる光に作用します。これは光の周波数が、あなたがエックス線として知っている物と宇宙線スペクトルとのあいだの幅の周波数にまで増大されるからそうなるのです。

このような周波数になると光は全く容易に金属を通過します。そこでこの波がドアーの内壁上で金属から離れるとき、ふたたび放射線と相互に作用しあって、光の元の周波数と同じのいわゆるビート周波数を生じさせます。そこであなたは表面的には金属を透して見ているようにみえても、実際には再生像を見ているんです。そちらの準備ができたら宇宙船を発進させましょう」

本能的に私は座席の中に自分をしっかりと埋めて、両手でひじ掛けを握った。

第4話へ続く

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