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  ホワイトサンズUFO搭乗事件 第5話 ダニエル・フライ

UFO Contactee No.141より転載 久保田八郎訳

(前回までのあらすじ)1950年7月4日の夜、米ニューメキシコ州ホワイトサンズのロケット実験場で技師として活動していたダニエル・フライは、暑さに耐えかねて砂漠地帯へ散歩に出かけたとき、突然空中から不思議な円形の物体が眼前に降下して着陸した。驚いている彼の耳にどこからともなく人間の声が響いて、地球の科学の誤りその他について英語で説明し始めた。フライは茫然として聞くのみ。この物体は別な太陽系の惑星から釆た宇宙船らしい。やがて彼はそれに乗ることをすすめられて、信じられないような超高速でニューヨークを目指して無音で飛行したのである。この物語は実際に発生した驚異的事件として世界のUFO研究界にショックを与えた。この記事は生前に彼から翻訳権を与えられた訳者による全訳の第三回目である。

ジェットコースターや飛行法の説明

(あと数分間でニューヨークの上空へ来ますよと異星人の声が聞こえてから説明を続けた)

「高度を約32キロメートルに下げましょう。あなたが乗っている宇宙船は人間の輸送用に作られたものではないから(フライが座っている小部屋は緊急時用の設備にすぎない)、私たちの母船でやっているような完全な負の重力補正をする必要があるとは考えられなかったんです。その結果、下降を始めるにつれて地表の方向に加速されるでしょう。だからあなたの体重は少し減ってきますよ。そのために気分が悪くなるようなら加速度を落としてあげましょう」

▲イラスト/池田雅行
▲イラスト/池田雅行

私は少し胃が上がってくるような感じがした。これは速度の遅いエレベターで下降するときの感じに似ている。この感じは約30秒続いたにすぎない。やがてまた私の体重は正常になった。

「あなたはあと1分もすれば適当な高度に降りられるような一定の加速度で下降しているでしょう。もちろん進行の安定には正の重力加速度を伴います。しかしあなたはそれを感じないでしょう。あなたは重力の変化によってさほど困らなかったようだが、地球人はまだ飛行機用のGの補正装置を開発していませんから、あなたは私たちよりもこんな変化に強いのだろうと思いますね」 

私は答えた。

「この程度の変化で私がくたびれると思うなら、われわれのローラーコースターに乗ってみるか、スクァートジョブに乗ってアウトサイドループでもやってみるといいですよく」

相手は答えた。

「ちょっと待ちなさい。あなたはわれわれの弱みにつけこんでいるようだ。私の英語に対する理解は完全だとうぬぼれていたのですがね。あなたは意味の分からない言葉を二つほど使いましたね。その意味を説明してくれませんか」

「ローラーコースターとスクァートジョブのことですかい? ローラーコースターというのはアメリカの遊園地に見られる機械仕掛けのことですよ。それは乗客用の座席がついた低いオープンカーから成っていて、乗客がつかまるための手すりが付けてあります。鋼鉄の車輪があって、それが高い鉄骨の上に敷かれた二本の鉄レール上を走るんです。乗客が座席に座ると、沢山連結されたオープンカーは軌道上の可動チェーンに連結されて、チェーンがカー全体を最高の位置まで引張り上げる。そこからカーが切り離されて、あとは重量まかせとなる。カーは急角度で急降下し、やがて地面まで降りてからふたたび出発地点の高さに急上昇する。こうした急上昇と急降下が何度もくり返される。それに急傾斜の短い半径の旋回部分が数カ所あるし、最後に乗客は出発点に帰って来る。そしてカーはスリルを求める別な乗客と入れ替えられるんです。

これに乗って起こる爽快な気分は、重量の急速な変化を感じた脳の反射部分が血液中にアドレナリンを放出することによって起こるんです。これは肉体が突然の危険にさらされた場合には、いつでも起こるんですが、コースタの場合は本当の危険はないことが分かっています。そこで乗客は実際の危険にさらされることなしにアドレナリンによって引き起こされる刺激を楽しむことができるんです。

スクァートジョブというのはアメリカの俗語で、ジェット機の1つを意味します。あなたはこれらを研究するのに充分な機会があったはずだから、よく知っていると思うんですがね。

アウトサイドループというのは飛行法の一つです。飛行機が宙返りをするのですが、そのとき機体の上部が、描く円の外側になるようにするんです」(訳注:普通の宙返りは上昇しながら操縦席が背面になるように円を描くが、アウトサイドループは操縦席を上側にして前方へ落ちるように円を描く(航空隊用語では『逆宙返り』という)「有難う」と声が答えて「あなたを直接コンタクトの手段として選んだのは間違っていなかったようですね。

壮麗きわまりないニューヨークの夜景

あなたはいま約32キロメートルの高度にいてニューヨークは眼前に展開しています。あなたの円盤は北西側から接近していて、このコースを飛び続けるとやがて市の北東端の海に達するでしょう。そこで市街を旋回して西方へ進行することになります。と同時に円盤は旋回しますから、透視スクリーンはいつも市街の中心にむけられるはずです。あなたの円盤の速度は時速約90キロに落とされますから、もっと景色を楽しむ時間がもてますよ」

もし私が作家か詩人であったら、眼前にゆっくりと回っている世界最大の都市として目に映るこの光景について、ちょっとした腕を発揮するところだが、私は作家でも詩人でもなく、言葉をあまり知らず、貧弱な文章しか書けないたんなる技術屋にすぎないので、それを試みることは絶望に近い。

約32キロメートルの高度なら灯火がもっと明るくて、それより高空から見るよりも個々にはっきりと識別できた。

これは数個の火花を放つ輝く炭層どころではなく、数百万個の青白いダイヤモンドをちりばめた巨大な衣装であって、黒いビロードを背景として燦然ときらめいているのだ。眼下の各種の異なる温度は円盤の急速な連動と結びついて灯火群を激しくきらめかせている。だから市街全体が脈動してチラチラ発光する海となっているのだ。

第6話へ続く

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